コチョウラン栽培の覚え書き

Phalaenopsis sp.品種不明 大輪系で丈夫。
コチョウランの花どきはよくわかりません。無加温で栽培している当方では、ちょうど梅雨頃に咲きます。花芽は11月頃に出てくるのですが、冬の間は伸長がすごく鈍いです。5月頃から急に伸び出して、ちょうど6月頃に開花する運びです。開花が遅いと、その分生長が遅れるので、あまり良くないでしょう。冬に18℃くらいに加温して花芽の生長を促してあげると3月~4月くらいには咲きます。
Phalaenopsis sp.品種不明、中輪形で花びらの大きさに対してリップが大きめ。
花の終わった直後から寒さがくるまでの間に、新しい葉っぱを伸ばして生長します。生長期には1~2枚の葉っぱを出します。一年間で出た葉っぱの数や大きさで、翌年の花の数が決まるようで、春も早めから生長をはじめた株はそれなりの数の花が咲きます。当方のような肥培もしないずさんな育て方で、しかも生長期が長くとれない場合は3~5輪程度しか咲きません。
Phalaenopsis ‘Pure Moon\'ピュア・ムーン レモンイエローの中輪種。
贈答用コチョウランのように、たくさん咲かせることは難しいですが、育ててちょっと花を楽しむ程度ならさほど手間はかかりません。新しい葉っぱが出てきたら、水をたっぷりと、ときどき肥料くらいです。屋外の直射日光が当たらない暗めの場所に吊しておくと調子がいいです。葉っぱは生長と貯水のために重要ですが、余りたくさん出るわけではないので、1枚1枚が非常に大切です。強い日射しで焼けてしまうと、てきめんに生育が悪くなります。葉っぱを傷めないことが一番のポイントです。

セロジネとシンジュクの関係

Coelogyne Memoria↑新宿御苑と縁が深いとされる、メモリア・サダコ(手前)とメモリア・オカミ(奥)。サダコにはシンジュクNo.6、オカミにはシンジュクNo.8(もしくはNo.7)のナンバリングがあります。
セロジネには「シンジュクNo.○○」とナンバリングされている交配種がいくつかあります。品種名のあととかに括弧付きで記載されたりしているので、正式な名称ではないのでしょう(これとは別に、正式な名前がCoel. Shinjukuという品種もあります)。なぜこんな名前がついているのか、疑問に思っていたのでこれについて少し考察してみたいと思います。少ない資料での考察で、憶測もふんだんに入っているので戯言と思って頂ければ幸いです。

日本におけるセロジネの交配と経緯

経緯として日本では新宿御苑で昭和のはじめころ、セロジネの交配種がいくつも作出されているので、それに当てられた名前だと思われます。新宿御苑はセロジネに限らず、日本での洋ラン育種・栽培の黎明期を大きく支えた存在です。御苑に奉職されていた岡見義男さんは10数のセロジネ交配種を作出されており、氏により作出された品種群かもしれません。岡見さんの著書に書かれていたセロジネに関する内容で少しおもしろい箇所があったので、抜粋します。
[note]筆者も10余種作出したが、実生は発芽しやすいものであるから、鮮明な改良種でも作出されたらおもしろいと思う。
「ラン 種類と培養」 より抜粋[/note]ここからも、セロジネに関心を持っておられたことがうかがい知れます。

時を経ての登録

当時ちゃんと登録手続きをしなかった(できなかった)のか、正式に登録されたのは21世紀に入ってからという新宿御苑系の交配種がいくつか見られます。メモリア・フクバ、メモリア・オカミ、メモリア・サダコ、メモリア・トキコなどがそれにあたります。作出されたのは昭和の初めのようで著書には

[note]・Coelogyne Memoria Sasako 1928年開花 NO.6
・Coelogyne Memoria Tokiko 1925年開花 NO.4
※いずれも写真に添えられた説明[/note]などの記載が見られます。文末のナンバーは試作段階のもので、これが通称としてシンジュクの名前を添えて「シンジュク No.6」のように使われるようになったのかもしれません。
さて、これらの交配種を登録情報を調べてみると、オリジネーター(交配者…交配を行った人や組織)はShinjikuとなっており、新宿御苑を指すのではないかと思われます。登録者はSuwada Orch.となっているので、須和田農園の、故・江尻光一さんでしょうか。江尻さんは現在見られる一般的な家庭園芸の礎を築いた一人で、NHK趣味の園芸ではおなじみでした。とりわけ、ランの育種や普及では有名で、セロジネを現在に広く紹介した方でもあります。セロジネに関してわかりやすく書かれた一般園芸書も手がけておられます。

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登録されていなかった交配種を、新宿御苑の名前をしっかり記して正式に登録されたのではないでしょうか。あくまで憶測ですが。

さいごに

ファレノプシスやカトレア類、パフィオペディラムなどに比べると変異の少ないセロジネは、品種改良の対象にならなかったと思います。それを証拠に、現在登録されている交配種もかなり少ないです。そんなランの交配を手がけた岡見さん、一般に紹介した江尻さん、両氏はさまざまなランの育種を手がけ、普及に努められましたが、セロジネにも強い関心を持っていたのかな、と感じます。

[note]参考にさせていただいたサイト様、文献
・RHSのOrchid Register
(http://apps.rhs.org.uk/horticulturaldatabase/orchidregister/orchidregister.asp)
・岡見義男著 ラン 種類と培養 昭和39年発行 誠文堂新光社[/note]

セロジネの交配種いろいろ

セロジネとはなんぞや?と言う方は、「セロジネとその魅力」をご覧ください。
セロジネ交配種の花は似たようなものが多いですが、じっくり見るとちょっとずつ異なる違いが楽しかったりします。特にリップの色合いや模様の違いが堪らなくもあります。そんな交配種を紹介します。

インターメディア Coel. Intermedia

Coelogyne Intermedia代表的なセロジネの交配種です。生育も旺盛で、バルブの数も年々増えていって大株の開花は見事です。リップにレモンイエローの模様が入ります。芳香はややきつめです。花が一回り大きな大輪の品種マグニフィカム(Coel. Intermedia ‘Magnificum’)も比較的よく知られています。Coel. cristataとCoel. tomentosa(= massangeana)を掛け合わせた原種同士の交配です。花姿や性質が非常に優れているので、交配種の親としてもよく用いられているようです。

コスモ-クリスタ Coel Cosmo-Crista

Coelogyne Cosmo-Cristaインターメディアを少し大きくしたような花です。リップに入る模様はやや濃いめの黄色で、とりあえずそこで違いがわかります。花も若干こちらの方が大きめに見えます。こちらも芳香はややきつめです。基本的な性質はインターメディアと変わりません。Coel. Intermedia × Coel. cristataの交配種です。シンジュクと名前が振っていることがあるのですが、新宿御苑で作出された品種かはよくわかりません。

メモリア・オカミ Coel. Memoria Okami

Coelogyne Memoria Okami新宿御苑の品種で、シンジュクNO.7(資料によってはNO.8)のナンバリングがされています。花茎は下垂せずにやや斜上する性質があります。花はコスモ-クリスタに似ますが、上萼片が立ち上がるので見た目の雰囲気はやや異なります。名前に含まれるオカミはおそらく、セロジネの交配種をたくさん作出された岡見義男さんの事だと思われます。Coel. Intermedia × Coel. Shinjyukuの交配です。

メモリア・サダコ Coel. Memoria Sadako

Coelogyne Memoria Sadako新宿御苑の品種で、シンジュクNo.6のナンバリングがされています。ほかの交配種に比べると花数はやや少ないですが、存在感の強い大輪です。リップ全体が赤褐色に色づき迫力があります。どことなく片親である原種スペシオサの雰囲気を持っていると思います。色彩とか全然違いますが。Coel. speciosa × Coel. Intermediaの交配です。

秋口のラン

夏の終わりから、秋口にかけて庭で咲いているランの花です。明確に秋咲きというより、不定期咲きでちょうど今の時期に咲いてくれたといった感じです。

カトレア ミニパープル[C. Mini Purple]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA品種の詳しい説明はこちらの過去ログを参照にしてください。
新芽がある程度伸びたらバルブが完成する前に花を咲かせるタイプのミニカトレアです。1年に2回くらい咲きます。ある程度株が大きくなってきたからか、新芽が同時に数本伸びてきて、花も6輪くらい咲きました。支柱も誘引もせずにほおっておいたので花の向きがむちゃくちゃで、1枚に収まりません。一度びしっと誘引してキレイに仕立ててみたいもんです。今回、梅雨頃から雨のかからないベランダで水遣りを少しシビアにしたのですが、それとこの時期にたくさん咲いたのは何か理由があるのか偶然なのか。

カトレア リトザック ’リビング・ドール'[C. Litozac ‘Living Dool’]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA以前はソフロレリオカトレア属でしたが、カトレア類の分類の大幅見直しで現在はカトレア属に。不定期咲きのミニカトレア交配種で、前回は春に咲いたと思います。草丈はミニなのですが花がミディくらいで幅10cmくらいになります。庭に放置していたら葉焼けしつつ、きれいな花を咲かせてくれました。ごめんなさい。もともと花つきがよい品種のようで、つぼみができると途中でしけったりせずにいつも咲いてくれます。リトザックは’リビング・ファイアー’という真っ赤な花色の個体もよく知られています。

ドリテノプシス・パープル・ジェム'[Dtps. Purple Gem]

OLYMPUS DIGITAL CAMERAパープルジェムについてはこちらの過去ログを参照にしてください。
ちっちゃな花が舞い踊るようにたくさん咲くタイプのコチョウラン類です。開花期間と花もちがすごく長く、秋から冬まで咲き続きます。この個体はやたら花茎が長く伸びてバランスが悪いですが、花びらがややシャープな感じが素敵なのです。庭の木陰に吊るしておけば、特に手間もかからず咲いてくれる丈夫なラン。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAこちらもちょうど今咲いている、白花のパープルジェムです。冬にも咲いていて、今年2度目の開花です。

ホリドータ キネンシスはよく咲く

Pholidota chinensisってこんなの

OLYMPUS DIGITAL CAMERA洋ランというよりなんとなく山野草とか野生蘭をほうふつとさせます。ぶっちゃけ言えば、おとなしくて地味めですがすごく丈夫です。
種小名の示すとおり、中国とかに分布する原種です。中国と言っても南部の方で、分布域にはミャンマーやインドシナなど東南アジアも含まれます。セロジネに近いと言うことで、水多めで夏は日陰で育ててます。肥料は夏前に1回くらいやりますが、ほとんど無肥料です。肥培した方がバルブが充実してたくさん花は咲くかもしれませんが、秋までやると今度は花付きが心配なので、花後に最低限だけやってる感じです。でも…やっぱり小さいバルブから出た花穂は、短くて花数も少ないです。
バルブの上にやや硬めの葉っぱを2枚付けます。緑が濃くて光沢があり、立てに数本の筋が入ります。3月頃から花茎が上がってきて、5月に入って気温が高くなると一気に開きます。花はリップがくっきりした白色で他は透明感のある薄白、大きさは1cmくらいです。花茎を湾曲させて花茎が垂れ下がるように咲きます。

日射しとか

OLYMPUS DIGITAL CAMERA遮光はネットをしているわけじゃないのではっきり言えないのですが、夏に置いている場所は遮光率50%~70%くらいになってるんじゃないかと思います。ファレノプシスが葉焼けしない程度の場所です。セロジネ・インターメディアが同じ場所で(おそらく日照不足で)作落ちしちゃったんですが、ホリドータは特に問題なく花がいつも通り上がってきたので、日陰はけっこう好きみたいです。毎年6月頃までは午前中いっぱい日の当たるところに置いてるのですが、葉焼けはしていないです。ときどき葉先が枯れてることがあるんですが、これは水不足かなあ…と思ってます。わかんないですけど。

寒さとか水やりとか

寒さには強いです。最低気温が5℃切るかな、といった時期になったら室内に取り込んでます。冬の水やりは2週間に1回だと思います。鉢を持ち上げてえ、「うわっ、(乾きすぎて)軽くなってる!」と感じたときにやってるのっで正確にはわからないです。春から秋は適当にびしゃびしゃやってます。プラ鉢を使って発酵バーク(ネオソフロン)で植え付けてますが、今のところ根腐れは大丈夫です。ちゃんと育てて、バルブぴっちぴちの株に仕立ててあげたいなと思うのですが、ほぼ放置でも元気なので、毎年そんな感じになっています。

世界らん展日本大賞2013 に行ってきました

毎年恒例、東京ドームで開かれるランの祭典「世界らん展日本大賞2013」を見に行ってきました。10年くらい前はまだ各地で規模の大きならん展が催されていましたが、現在は激減しています。そんな中でも毎年かわらずに行われる本イベントはラン好きにとってはありがたいものです。

これでもかというランの波

入場してすぐのエントランス部分は毎年とにかく圧倒的な物量です。なんて贅沢、ここにはまだバブルが残ってたのかと派手さにビビります。個々の株を楽しむというより、集合美ですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA降り注ぐオンシジウム。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA色とりどりのエピデンドラム。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA流れ落ちるがごとく咲き誇るセロジネ。インターメディアかクリスタータか、そんな感じです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA乱立するデンドロビウム。よく見るボリュームのある交配種の面々。

Dtps. Perpul Gem パープル・ジェム

OLYMPUS DIGITAL CAMERADtps. Perpul Gem(ドリテノプシス・パープルジェム)はコチョウランの一種で、花は幅3cmほどの小輪多花性です。ドリテノプシスはファレノプシス(コチョウラン)×ドリティスの人工属です。ミニコチョウランが広く普及していますが、花の大きさだけ見るとこれはミニというよりプチに近いかも。株自体はほかのコチョウランとあんまり変わらない大きさです。Phal. equestris(ファレノプシス・イクエストリス)×Dor. pulcherrima(ドリティス・プルケリマ)の原種同士の交配です。手持ち株の両親は基本種とは異なる個体(equestris ‘Alba’ × pulcherrima ‘Splash’)なので、正確にはパープルジェムじゃないかもしれないけど、どう見てもよくあるパープルジェムの花です。形はもとより色も。特に個体の持つ特徴は花に表れなかったようです。
なんといっても強健で花つきがとてもよいのが特徴です。不定期咲き、うちでは秋~春にかけての3シーズン花茎を何本か伸ばして咲き続けています。