デンドロビウム ブロンカルティ Den. bronckartii

Den. brockartii
ブロンカルティはカリスタ系デンドロビウムの原種です。どちらかというと、アマビレ(Den. amabile)の名前でよく知られているかもしれませんが、最初についていたラベルにブロンカルティと書かれていたので、そちらを尊重します。

バルブの上方から花芽を出して、垂れ下がるように数十輪の花を咲かせます。株姿や花の咲き方は、まさにカリスタ系といった感じです。花の大きさは幅3cmほどと小ぶりですが、一度にたくさん咲くのでゴージャス?です。花色はピンクで、リップに黄色い目が入ります。ファーメリー(Den. farmerii)の花色を濃くしたような感じです。株が大きくなると複数のバルブから同時に花が咲く上に、充実したバルブにはたくさんの花が付きます。’ベニボタン’をはじめ、個体名のついたものをらん展の展示などでちらほら見ます。

当方が育てているものにも’Pink Lady’の個体名がついていますが、個体の特徴など詳細はよくわからないです。花命は短くキレイな状態で見られるのは10日ほどです。
Den. brockartii2
そういう個体なのか、まだ株がさほど大きくないからか、あまり花茎が伸びず、花穂は下垂すると言うより横から斜め下に向かって伸びている感じです。花芽は2本つきましたが、同時には咲いてくれませんでした。もう一本の花芽はもう少し時間がかかるでしょう。

無加温で育てて、初夏くらいに花が咲きます。冬でもある程度の温度(5月くらいの気温?)をキープできると、春先くらいに花が咲くのかもしれません。耐寒性はわかりませんが、10℃程度の場所で特に傷みもなく冬を越します。同じ系統のアグレガタム(Den. aggregatum)やクリソトキサム(Den. chrysotoxum)はもう少し低温でも元気なので、ブロンカルティも案外もう少し低温でも大丈夫かも、怖いからやりませんが。

気温の高い時期はたっぷり水をやりますが、冬は基本的に断水します。やるとしたら、霧吹きで葉っぱを少し湿らす程度です。冬の低温と断水により花芽を作るスイッチが入るとされます。花付きがよく、デンドロ原種のなかでも比較的とっつきやすいのではないかと思います。デンシフローラムとかアグレガタムと相性がよい方は、まず間違いないんじゃないでしょうか。

Den.ノビルの変種 クックソニアナム

Dendrobium nobile var. cooksonianum 2Den. nobile var. cooksonianum 
デンドロビウム・ノビルは交配親として有名な原種ですが、今ひとつ人気がないように感じます。しかし、自分の中では一番好きなデンドロ原種の1つです。慣れれば真夏の直射日光でもぴんぴんしてますし、寒さにも強いです。手間もかからず花ももちろんキレイです。ただ、数輪ちょこちょこと咲くのですが、一斉にたくさんの花を咲かせることは、栽培に慣れていないとむずかしい気がします。
Den.nobile var. cooksonianum4花の咲いている上の節から高芽
また、株の大きさも花付きに影響するでしょう。大株になっていくと花付きはよくなるのかもしれません。花芽が高芽に変わってしまう?こともよくあります。1つのバルブで花を咲かせつつ、上の方では高芽が生長しつつと言うこともあります。
Dendrobium nobile var. cooksonianumクックソニアナムの花
ノビルにはいくつもの変種が知られています。ここで紹介するクックソニアナムもそんな変種の1つです。生育旺盛で、高芽でガンガン増えるからか、単なるノビルよりも比較的栽培されているように感じます。その他にもノビルの変種は、純白花のバージナリスや大輪のサー F. W. ムーアなどが有名です。
Dendrobium nobile var. cooksonianum 3花びらに紫色の大きなブロッチが入ります
一番の特長は花びらの付け根当たりに紫色のブロッチが入ることです。リップにも同様のブロッチが入ります。花の開き方が少し不安定で、よじれたりすることもあります。基本的に大きく平開せず、花びらの先端が後ろに大きく反り返ります。
原種洋蘭図鑑によると、クックソニアナムは「花弁がすべて唇弁化した個体」と記載されています。となると、クックソニアナムは三蝶咲きのノビルと言うことになります。花びらの開き方が不安定なのはそのあたりにヒントがあるのかもしれません。また、花びらに厚みがあり、表面にフェルトのような毛が生えているところも、唇弁化の影響かもしれません。

セロジネの原種いろいろ

セロジネの原種はラン展や即売会などでも比較的リーズナブルな値段で並んでおります。丈夫でよく増えるものもある反面、ちょっと高温多湿や低温に弱い種もあります。ここでは、比較的とっつきやすくてかわいらしい、セロジネの原種をいくつか紹介します。
Coelogyne flaccida \'Lucky Boy\'セロジネ フラクシダ ’ラッキーボーイ’ Coel. flaccida ‘Lucky Boy’
2月の中旬頃に開花。花茎は湾曲して下向きに垂れ下がります。花の大きさは4cm~5cmくらいで色は白ですが、うっすらと赤茶色がかっているように見えます。一本の花茎から7~10輪程度の咲きます。リップには黄色いブロッチとともに、赤茶色の筋が入ります。芳香が強めです。画像は’ラッキー・ボーイ’と呼ばれる個体です。
Coelgyne lacteaセロジネ ラクテア Coel. lactea
3月の下旬頃に開花。花の大きさや姿は上記のフラクシダに似ていますが、こちらは花茎が直立します。また、花の白さはこちらの方が鮮やかです。気温の少し上がった時期に咲いたからか、花命が2週間程度と若干短く感じました。
Coelogyne ochraceaセロジネ オクラセア Coel. ochracea
4月中旬に開花。強健かつ花付きのよい原種です。花茎は直立からやや斜上して、数輪の白い花を咲かせます。リップに入る黄色いブロッチは濃いオレンジの縁取りが入ってかわいらしいです。バルブは縦長の細いタマゴ型でつやつや、密生して生えます。芳香はありますが余りきつくないです。

どれも同じような花に見えますが、ちゃんと見るとそれぞれに個性があります。基本は初夏~秋にしっかり遮光(春秋は50%、真夏は70%くらい)して、たっぷり水を与え、風通しをよくすること、以上3点です。冬は5℃~7℃程度あればとりあえず大丈夫のようです。性質はどれも同じような感じですが、特にバルブの伸び方や花芽の多さなどを考えると、オクラセアが強健さでは半歩出ている気がします。

おかしなサルカタム

デンドロビム・サルカタム(Dendrobium sulcatum)はデンドロビウムの中でもカリスタ節(section Callista)に分類される原種です。カリスタ節は花が房状にたくさん咲くものが多く、原種の中でも比較的よく知られるグループです。有名どころに、アグレガタム(Den. aggregatum)、クリソトキサム(Den. chrysotoxum)、デンシフローラム(Den. densiflorum)、ファーメリー(Den. farmeri)などがあります。花色は黄色系のものが多く、他に淡いピンクや白っぽいものも見られます。
お話をサルカタムに戻します。主な開花期は春で、扁平な形のバルブがユニークで特徴的です。花色は個体により色幅があり黄色~オレンジ色の花を1本の花茎に最大十数輪程度咲かせます。リップの奥が赤褐色になることが多いです。

P1070305

扁平なバルブが特徴。サルカタムにしてはややバルブが太いようにも見えるが…


当方で栽培しているサルカタムは、なぜかネットや本に載っているものと花姿が全く違います。どちらかというと近縁のシルシフローラムやデンシフローラム似た花姿です。
Dendrobium sulcatum

当方で開花したサルカタム。花姿がおかしい


シルシフローラムもデンシフローラムもこん棒状のバルブを出して、やや厚みのある葉っぱがバルブの上部にまとまって付きます。サルカタムはやや厚みの薄い幅のある葉っぱを付けるので、株姿は違います。雑種…なのかもしれません。だとしたらおもしろいなあと思います。


参考画像

Dendrobium thyrsiflorum

シルシフローラム


デンシフローラムの株姿

めくるめく原種デンドロの世界 その4

ランは花の美しさやおもしろさもさることながら、その草姿も十分楽しいのではないかと思います。というわけで、個人的に好きな草姿のデンドロビウムを紹介したいと思います。今回は「デンドロ界のぺたんこ」こと、デンドロビウム・プラティガストリウムです。

Den. platygastrium デンドロビウム・プラティガストリウム

一見普通のバルブのように見えるが…
一見普通のバルブのように見えるが…

さっそくですが、その草姿を見ていきましょう。プラティガストリウムの草姿は見た目、よくあるノビル系デンドロビウムに似ています。しかしこれを90度、角度を変えてみると…

厚みがない
厚みがない

画像では少しわかりにくいのですが、厚みがなくて薄っぺたいのです。普通に棒状に生育すればよいものの、なぜプレスされてのされたような姿なったのでしょうか?すごい狭いスキマとかでも対応できるから?おそらく違います。自生地では木の幹を背もたれにして、逆さまに張り付いたりしてるのかも。
どちらにしてもこのぺっちゃんこ具合が最大の魅力と感じます。バルブのツヤツヤした感じもたまりません。

葉面が横を向く
葉面が横を向く

葉っぱの出方も微妙におもしろいです。お日様の光を効率的に受けられるようにか、葉面が斜め横から横に向きます。大株だと、このバルブは50cm近くの長さになるそうです。

追記

花は主に春に咲きます。クリーム色のちっさな花が一本の花茎に数輪まとまって咲きます。見た目はセッコクに近いです。育ててる感覚で、ノビル系とかとあんまり性質変わらないんじゃないかなあ、と思います。水やりとか日射しとか。耐寒性もさほど弱くなさそうですし。
見た目すごくそっくりなものに、デンドロビウム・ラメラツム(Den. lamellatum  Synonym:Den. platycaulon)があります。こちらもバルブぺちゃんこです。

めくるめく原種デンドロの世界 その3

デンドロビウムは種によって草姿はまちまちです。今回はそんな中でも多肉植物のような葉っぱがかわいらしいデンドロビウム、リケナストラムの仲間を紹介します。
デンドロビウム属リケナストラム節はオーストラリア北東部の熱帯地域にリケナストラム(Den.lichenastrum)、プレンティセイ(Den.prentisei)、トレッサエ(Den. toressae)の3種が分布します。ここではデンドロビウム属として解説していますが、分類がややこしく、バルボフィラム(Bulbophyllum)属やドックリリア(Dockrillia)属に分類される(もしくは、分類されていた)こともあります。

リケナストラム節はこんなデンドロビウム

肉厚の葉っぱが魅力のデンドロです
肉厚の葉っぱが魅力のデンドロです

このグループに共通することはバルブがなくて這うように伸びる茎に肉厚の葉っぱを付けることです。葉っぱの形に違いがありますが、おおむね小型でかわいらしいです。葉っぱはツヤツヤぷっくりしてたり、表面が梨地のように細かくざらざらになっていたりと葉の姿形の妙を楽しむことができます。そういう言葉はないのですが、熱帯雨林性多肉デンドロと勝手にカテゴライズしています。
葉っぱの付け根からすごくちっさいけども味のある花を咲かせます。大きさはおおむね幅4mm~9mm、色は幅がありますが、白や黄色っぽくてリップがオレンジや黄色になります。紫や赤っぽい筋が入るものもあります。

リケナストラムとプレンセティラ -種の紹介 その1-

Den. lichenastrum var. prenticei
多分 Den. lichenastrum var. prenticei

リケナストラムとプレンティセイは標高200m~1200mの熱帯雨林の中、直射日光の射し込まない日陰の岩上や木の枝に自生します。この2種は葉っぱの形以外ほぼ同じで、同種とすることもあります。また、プレンティセイはリケナストラムの変種(Den. lichenastrum var. prenticei)とする見方もあります。ちなみに、葉の形がリケナストラムは平たい豆粒のようで、プレンティセイはやや細長いです。自生環境も同じで、基本的な性質も変わらず、栽培にも違いはないと見てよいでしょう。このあたりの明確な分類は曖昧模糊としてむずかしいように感じます。リケナストラムには他にもトゥエンティシー(var. twenticii)やオーレア(var. aurea)などの変種が知られます。

トレッサエ -種の紹介 その2-

トレッサエはこのグループ中で最小の種です。標高1000m付近の熱帯雨林や疎林に自生します。上記の種と性質は基本的に変わらないようですが、疎林にまで広がるということは、やや日射しを好むのかもしれません。笹かまぼこをちっちゃくしたような輪郭の葉を付けます。葉っぱ同士が重ならないように、左右交互に出していく様もかわいらしいです。花茎が伸びないので、開花時は株に直接花がくっついているように見えます。

栽培メモ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA丈は大きくならずに這うように広がるのでヘゴやコルク付けにしても面白いのではないかと思います。鉢を使うなら、平たい鉢のほうがよさげです。深い鉢しかなかったら、下に詰め物するとか。栽培しやすいともいわれますが、自分はまだ育ててからが浅いので何とも判断できません。ヒントは・着生・日陰から半日陰、多雨で湿潤な環境に育つなどではないかと感じます。

※種の解説と分類については DENDROBIUM AND ITS RELATIVES を参照にしました。

めくるめく原種デンドロの世界 その2

洋ラン的にデンドロビウムというと、ノビル(ノビレ)系、ファレノプシス系、フォルモサム系などがメージャーで鉢花でも非常によく見かけるお手軽デンドロです。そこに加えて最近ではキンギアナム系の交配種もよく見るようになりました。ややマニアックですが、花びらがねじれまくったようなイメージのある(本当はそういうわけではないです)スパチュラータ系なんかもよい感じです。
デンドロビウムはたくさんの亜属に分かれていて、それぞれに特長があります。今回はラトーリア系デンドロビウム、その中でも比較的手軽なんじゃないかと思うDen.フォーベシーを紹介します。

ラトーリア系って

デンドロビウム・ラトーリア系、正確に言うとデンドロビウム属のラトーリア節はおよそ50種がフィリピンからサモアにかけて分布します。といっても、自生はパプアニューギニアに集中しており、9割方がここにあります。分布域は熱帯雨林の低地から高地までと広いです。
個人的にどんなんがラトーリア系なのかといわれてもむずかしいのですが、「花茎が立ち上がってじゃもじゃした毛の生えた花が数輪付く」みたいなイメージがあります。しかし、そのイメージに当てはまらないものも多くて、結局の所「パプアニューギニア熱帯雨林のデンドロ」と割り切って考えてます。花色は白とか薄黄色とか緑白色とかで赤褐色の斑点が入ったり、基本的に地味ですが花は中々立派で見てて飽きないパターン。

Den. フォーベシー Dendrobium forbesii

OLYMPUS DIGITAL CAMERAニューギニアの標高900m-1500m付近に分布します。春から夏咲きで、バルブの尖端から花茎を伸ばして数輪の花を咲かせます。花色は淡い黄色で幅は5cmくらいです。尖端のとがった花びらはややシャープな感じで、斑などの模様が入らないのですっきりとした雰囲気です。OLYMPUS DIGITAL CAMERAバルブは株元が細くて真ん中当たりが紡錘形に膨らみ、長さ30cmくらいになります。ほふく茎が伸びずに大きめのバルブが密につくので、株全体が塊状でかなり大きく見えます。自分の中では中~大型のデンドロかなと感じます。花を後ろから見ると、付け根がけばけばと毛が生えたようになっているところがおもしろい特長です。
日射しと風通し、水が好きなランで、肥料もしっかり与えた方がよいようです。

めくるめく原種デンドロの世界 その1

デンドロビウムはポピュラーかつ美しいランで、原種も交配種に劣らない美しいものがたくさんあります。また、咲き乱れた大株の姿は圧巻です。デンドロビウムは姿形、生態の異なる仲間がたくさんあるので、40くらいの節や亜属に分けたりします。ここでは植物園で見かけたデンドロビウム属デンドロビウム節のランを紹介します。

デンドロビウム節はもっともポピュラーなグループのひとつで、現在広く出回るデンドロ交配種の親となっているnobile:ノビルやmoniliforme:モニリフォルメ(セッコク)をはじめ、育てやすく美しい種がたくさんあります。誰が見てもまあ、美しいと思えるようなストライクゾーンの広い花姿の種が多いのも特徴でしょうか。ランの中でもデンドロを育てたい、という方にはまず知って欲しいグループでもあります。いわばデンドロの入門編です、といっても種類も多いですし、それだけではなく奥も深いと感じます。

Den. nobile ノビル

ノビル
ノビル

言わずと知れた、デンドロを代表する原種で、非常にたくさんの変種があります。ここから発した交配種も数知れずです。リップの真ん中に入る大きな黒いブロッチが印象的で、花びらの先端がほんのり紅桃色になります。ノビリスという品種名がついていましたが、よく見るノビルとあまり変わらないように感じます。

Den. nobile var.cooksonianum ノビル クックソニアナム

ノビル クックソニアナム
ノビル クックソニアナム

上記ノビルの数ある変種のひとつです。花びらの付け根に紫色の斑がくっきりとはいるのが特徴です。微妙な違いのように感じますが、実際に見ると、ノビルとは雰囲気ががらりと違ってきます。何となく全体の線が、こちらの方がくっきり見えます。

Den. friedericksianum フレデリックシアナム

フレデリックシアヌム
フレデリックシアヌム

黄色い花が全体を明るく見せてくれます。こちらもデンドロビウム節の中ではポピュラーな原種です。ノビルをそのまま黄色くしたような花姿です。花持ちがよく、1月半近く咲き続けるそうです。

Den. loddigesii ロディゲシー

ロディゲシー ヘゴやコルク付けにすると非常に映えます。
ロディゲシー

小型種で、バルブも非常に細いです。バルブは立ち上がらずに横から下に向かって伸びます。非常に高芽をよく出して増えるので、安価で苗もたくさん出回ります。寒さに強く、うちではマイナス1℃のベランダでも耐えていました。花は咲きやすいという人と咲きにくいという人がいます。冬に断水すると春に花芽を出しやすいともいいますが、定かではありません。バルブの細さの割に、大きな花を咲かせます。ピンクと黄色のコントラストがかわいい花で、リップが細かく切れ込みます。花持ちが悪いのが残念ですが、それ以外はパーフェクト。一応、初心者向き原種で、枯れにくいです。コルクやヘゴ付けにすると映えます。