セロジネの原種いろいろ

セロジネの原種はラン展や即売会などでも比較的リーズナブルな値段で並んでおります。丈夫でよく増えるものもある反面、ちょっと高温多湿や低温に弱い種もあります。ここでは、比較的とっつきやすくてかわいらしい、セロジネの原種をいくつか紹介します。
Coelogyne flaccida \'Lucky Boy\'セロジネ フラクシダ ’ラッキーボーイ’ Coel. flaccida ‘Lucky Boy’
2月の中旬頃に開花。花茎は湾曲して下向きに垂れ下がります。花の大きさは4cm~5cmくらいで色は白ですが、うっすらと赤茶色がかっているように見えます。一本の花茎から7~10輪程度の咲きます。リップには黄色いブロッチとともに、赤茶色の筋が入ります。芳香が強めです。画像は’ラッキー・ボーイ’と呼ばれる個体です。
Coelgyne lacteaセロジネ ラクテア Coel. lactea
3月の下旬頃に開花。花の大きさや姿は上記のフラクシダに似ていますが、こちらは花茎が直立します。また、花の白さはこちらの方が鮮やかです。気温の少し上がった時期に咲いたからか、花命が2週間程度と若干短く感じました。
Coelogyne ochraceaセロジネ オクラセア Coel. ochracea
4月中旬に開花。強健かつ花付きのよい原種です。花茎は直立からやや斜上して、数輪の白い花を咲かせます。リップに入る黄色いブロッチは濃いオレンジの縁取りが入ってかわいらしいです。バルブは縦長の細いタマゴ型でつやつや、密生して生えます。芳香はありますが余りきつくないです。

どれも同じような花に見えますが、ちゃんと見るとそれぞれに個性があります。基本は初夏~秋にしっかり遮光(春秋は50%、真夏は70%くらい)して、たっぷり水を与え、風通しをよくすること、以上3点です。冬は5℃~7℃程度あればとりあえず大丈夫のようです。性質はどれも同じような感じですが、特にバルブの伸び方や花芽の多さなどを考えると、オクラセアが強健さでは半歩出ている気がします。

セロジネとシンジュクの関係

Coelogyne Memoria↑新宿御苑と縁が深いとされる、メモリア・サダコ(手前)とメモリア・オカミ(奥)。サダコにはシンジュクNo.6、オカミにはシンジュクNo.8(もしくはNo.7)のナンバリングがあります。
セロジネには「シンジュクNo.○○」とナンバリングされている交配種がいくつかあります。品種名のあととかに括弧付きで記載されたりしているので、正式な名称ではないのでしょう(これとは別に、正式な名前がCoel. Shinjukuという品種もあります)。なぜこんな名前がついているのか、疑問に思っていたのでこれについて少し考察してみたいと思います。少ない資料での考察で、憶測もふんだんに入っているので戯言と思って頂ければ幸いです。

日本におけるセロジネの交配と経緯

経緯として日本では新宿御苑で昭和のはじめころ、セロジネの交配種がいくつも作出されているので、それに当てられた名前だと思われます。新宿御苑はセロジネに限らず、日本での洋ラン育種・栽培の黎明期を大きく支えた存在です。御苑に奉職されていた岡見義男さんは10数のセロジネ交配種を作出されており、氏により作出された品種群かもしれません。岡見さんの著書に書かれていたセロジネに関する内容で少しおもしろい箇所があったので、抜粋します。
[note]筆者も10余種作出したが、実生は発芽しやすいものであるから、鮮明な改良種でも作出されたらおもしろいと思う。
「ラン 種類と培養」 より抜粋[/note]ここからも、セロジネに関心を持っておられたことがうかがい知れます。

時を経ての登録

当時ちゃんと登録手続きをしなかった(できなかった)のか、正式に登録されたのは21世紀に入ってからという新宿御苑系の交配種がいくつか見られます。メモリア・フクバ、メモリア・オカミ、メモリア・サダコ、メモリア・トキコなどがそれにあたります。作出されたのは昭和の初めのようで著書には

[note]・Coelogyne Memoria Sasako 1928年開花 NO.6
・Coelogyne Memoria Tokiko 1925年開花 NO.4
※いずれも写真に添えられた説明[/note]などの記載が見られます。文末のナンバーは試作段階のもので、これが通称としてシンジュクの名前を添えて「シンジュク No.6」のように使われるようになったのかもしれません。
さて、これらの交配種を登録情報を調べてみると、オリジネーター(交配者…交配を行った人や組織)はShinjikuとなっており、新宿御苑を指すのではないかと思われます。登録者はSuwada Orch.となっているので、須和田農園の、故・江尻光一さんでしょうか。江尻さんは現在見られる一般的な家庭園芸の礎を築いた一人で、NHK趣味の園芸ではおなじみでした。とりわけ、ランの育種や普及では有名で、セロジネを現在に広く紹介した方でもあります。セロジネに関してわかりやすく書かれた一般園芸書も手がけておられます。

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登録されていなかった交配種を、新宿御苑の名前をしっかり記して正式に登録されたのではないでしょうか。あくまで憶測ですが。

さいごに

ファレノプシスやカトレア類、パフィオペディラムなどに比べると変異の少ないセロジネは、品種改良の対象にならなかったと思います。それを証拠に、現在登録されている交配種もかなり少ないです。そんなランの交配を手がけた岡見さん、一般に紹介した江尻さん、両氏はさまざまなランの育種を手がけ、普及に努められましたが、セロジネにも強い関心を持っていたのかな、と感じます。

[note]参考にさせていただいたサイト様、文献
・RHSのOrchid Register
(http://apps.rhs.org.uk/horticulturaldatabase/orchidregister/orchidregister.asp)
・岡見義男著 ラン 種類と培養 昭和39年発行 誠文堂新光社[/note]

セロジネの交配種いろいろ

セロジネとはなんぞや?と言う方は、「セロジネとその魅力」をご覧ください。
セロジネ交配種の花は似たようなものが多いですが、じっくり見るとちょっとずつ異なる違いが楽しかったりします。特にリップの色合いや模様の違いが堪らなくもあります。そんな交配種を紹介します。

インターメディア Coel. Intermedia

Coelogyne Intermedia代表的なセロジネの交配種です。生育も旺盛で、バルブの数も年々増えていって大株の開花は見事です。リップにレモンイエローの模様が入ります。芳香はややきつめです。花が一回り大きな大輪の品種マグニフィカム(Coel. Intermedia ‘Magnificum’)も比較的よく知られています。Coel. cristataとCoel. tomentosa(= massangeana)を掛け合わせた原種同士の交配です。花姿や性質が非常に優れているので、交配種の親としてもよく用いられているようです。

コスモ-クリスタ Coel Cosmo-Crista

Coelogyne Cosmo-Cristaインターメディアを少し大きくしたような花です。リップに入る模様はやや濃いめの黄色で、とりあえずそこで違いがわかります。花も若干こちらの方が大きめに見えます。こちらも芳香はややきつめです。基本的な性質はインターメディアと変わりません。Coel. Intermedia × Coel. cristataの交配種です。シンジュクと名前が振っていることがあるのですが、新宿御苑で作出された品種かはよくわかりません。

メモリア・オカミ Coel. Memoria Okami

Coelogyne Memoria Okami新宿御苑の品種で、シンジュクNO.7(資料によってはNO.8)のナンバリングがされています。花茎は下垂せずにやや斜上する性質があります。花はコスモ-クリスタに似ますが、上萼片が立ち上がるので見た目の雰囲気はやや異なります。名前に含まれるオカミはおそらく、セロジネの交配種をたくさん作出された岡見義男さんの事だと思われます。Coel. Intermedia × Coel. Shinjyukuの交配です。

メモリア・サダコ Coel. Memoria Sadako

Coelogyne Memoria Sadako新宿御苑の品種で、シンジュクNo.6のナンバリングがされています。ほかの交配種に比べると花数はやや少ないですが、存在感の強い大輪です。リップ全体が赤褐色に色づき迫力があります。どことなく片親である原種スペシオサの雰囲気を持っていると思います。色彩とか全然違いますが。Coel. speciosa × Coel. Intermediaの交配です。

ホリドータ キネンシスはよく咲く

Pholidota chinensisってこんなの

OLYMPUS DIGITAL CAMERA洋ランというよりなんとなく山野草とか野生蘭をほうふつとさせます。ぶっちゃけ言えば、おとなしくて地味めですがすごく丈夫です。
種小名の示すとおり、中国とかに分布する原種です。中国と言っても南部の方で、分布域にはミャンマーやインドシナなど東南アジアも含まれます。セロジネに近いと言うことで、水多めで夏は日陰で育ててます。肥料は夏前に1回くらいやりますが、ほとんど無肥料です。肥培した方がバルブが充実してたくさん花は咲くかもしれませんが、秋までやると今度は花付きが心配なので、花後に最低限だけやってる感じです。でも…やっぱり小さいバルブから出た花穂は、短くて花数も少ないです。
バルブの上にやや硬めの葉っぱを2枚付けます。緑が濃くて光沢があり、立てに数本の筋が入ります。3月頃から花茎が上がってきて、5月に入って気温が高くなると一気に開きます。花はリップがくっきりした白色で他は透明感のある薄白、大きさは1cmくらいです。花茎を湾曲させて花茎が垂れ下がるように咲きます。

日射しとか

OLYMPUS DIGITAL CAMERA遮光はネットをしているわけじゃないのではっきり言えないのですが、夏に置いている場所は遮光率50%~70%くらいになってるんじゃないかと思います。ファレノプシスが葉焼けしない程度の場所です。セロジネ・インターメディアが同じ場所で(おそらく日照不足で)作落ちしちゃったんですが、ホリドータは特に問題なく花がいつも通り上がってきたので、日陰はけっこう好きみたいです。毎年6月頃までは午前中いっぱい日の当たるところに置いてるのですが、葉焼けはしていないです。ときどき葉先が枯れてることがあるんですが、これは水不足かなあ…と思ってます。わかんないですけど。

寒さとか水やりとか

寒さには強いです。最低気温が5℃切るかな、といった時期になったら室内に取り込んでます。冬の水やりは2週間に1回だと思います。鉢を持ち上げてえ、「うわっ、(乾きすぎて)軽くなってる!」と感じたときにやってるのっで正確にはわからないです。春から秋は適当にびしゃびしゃやってます。プラ鉢を使って発酵バーク(ネオソフロン)で植え付けてますが、今のところ根腐れは大丈夫です。ちゃんと育てて、バルブぴっちぴちの株に仕立ててあげたいなと思うのですが、ほぼ放置でも元気なので、毎年そんな感じになっています。

Coel.Cosmo-Crista ‘Shinjuku’ コスモ・クリスタ ’シンジュク’

OLYMPUS DIGITAL CAMERA非常に花付きがよく強い芳香を放つセロジネで、以前はセロジネ ’シンジュク No.8’と呼ばれていたものだと思います。シンジュクの名前は新宿御苑で作出された種に付けられるのが一般的なので、本種もそうなのでしょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAIntermedia(インターメディア) × cristata’Sweet-Sented'(クリスタータ’スイート・センテッド’)の交配種です。さらに、Intermediaはcristata × massangeanaなので、2/3はcristataということになります。純白でリップに橙黄色が入る清楚な雰囲気の花です。花茎は自然に湾曲して下に向きます。花姿はインターメディアに似てますが、若干リップの奥がオレンジ色っぽいでしょうか。花付きは抜群によいです。それなりに肥培するとかなり花茎があがるんじゃないかと思います。開花期は部屋に置いていると、かなり甘い香りがし、鼻につくことがあります。日が射していて暖かいときなんかは、特に香りがきついように思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAときどきこのように癒着したおかしな花が咲きます。原因はわかりません。
春から秋は屋外でファレノプシスと同じ場所に置いてます。真夏はかなり遮光していますが、そこまでする必要はないのかもしれません。秋までに肥培すると花付きがよくなるような気がします。ウチの環境では10月頃に花芽が出てきて2月頃に咲きます。