デンドロビウム 原種に近い交配種

デンドロビウムはやや渋めでマニアックな原種から、山野草のような趣があるセッコク、鉢花として気軽に楽しめる育てやすい交配種まで、育てる楽しみはよりどりみどりです。Den. moniliforme

Den. moniliforme(セッコク)の一種

交配種は色々なものがありますが往往にして花色もカラフルで、なんと言ってもとっつきやすいのが特長です。価格も比較的リーズナブルで、ホームセンターなどでも冬から春にかけて、わっと花の付いたものが多く出回ります。交配種はたくさんの原種が関わっていますが、現在見られる交配種の大元となった原種で一番有名なのは、Den.ノビルでしょう。特に小型で寒さに強くて丈夫な交配種にはDen. モニリフォルメ(いわゆるセッコク)が親となっているものが多いですし、黄色系ならDen.フレデリックシアナムなどが重要なのではないかと思います。

Dendrobium friedricksianum

Den. friedricksianum(フレデリックシアナム)


ややマニアックでありますが、その交配種を見てどんな種が親となっているのかを想像するのも非常に楽しかったりします。興味があればRHSのサイトで、登録されている交配種の系譜を調べることができます。そんな楽しいデンドロビウムの交配種、その中でも原種に近いプライマリー交配種を紹介します。

プライマリー交配とは

交配種は色々な種を何世代も交配して作出されているものが多いですが、原種同士の交配種もあります。というか、交配は原種同士の交配からはじまるので当然です。そして、原種同士の交配を「プライマリー交配」と言います。
現在見られる最新の交配種のようにボリュームや豪華さはないですが、原種の特長を残しつつ、少し違ったような素朴な美しさをもっています。変なところに言及すると、100年くらい前に作出された交配種なんかもあり、何となくロマンがあったりなかったりです。もちろん株自体はその当時のものではありませんが、些細なことです。

Den. Cassiope デンドロビウム・カシオープ(カシオペ)

Dendrobium Cassiopeカシオープはノビルとセッコクの交配種で1890年に登録されています。ノビルにもセッコクにも変種や個体が多いので、その組み合わせで花姿や性質の異なるカシオープがあります。この個体の花姿はかなりセッコクよりですが、かなりノビルに近い個体もあります。Den. Cassiope 2上の画像は京都植物園で見たモノですが、確かカシオープのラベルが付いていたと思います。ノビルだったかもしれません…、間違っていたらスイマセン。
性質はセッコクと同じくらい丈夫です。花は前年バルブにつくことが多いですが、本年バルブにも付きます。交配種の中では一番開花が早い部類で、12月頃から咲き始めます。新芽も早いときは2月頃から伸び始めます。株姿は両者の中間的な雰囲気で、バルブはノビルほども太くならずセッコクほども細くないです。’ミス・ビワコ’という美しい個体があるそうですが、自分は見たことがありません。

Den. Aoyama デンドロビウム・アオヤマ

Den. Aoyamaアオヤマはアダンカムとセッコクの交配種で1924年に登録されています。花のないときの姿は上記のカシオープに似ているか、ほとんど同じです。花色はピンクでリップの喉が少し黄色く色づきます。花色はアダンカムから、花姿はセッコクからとったような雰囲気です。やや花びらがふっくらしたかわいらしいセッコクにも見えます。カシオープ同様に育てやすいです。花付きはよい方だと思います。ネットで画像を検索すると、かなり異なる花姿のものが見られるので、個体の組み合わせが異なるものもあるのかもしれません。

セッコク×ピエラルディー交配種

Dendrobium moniriforme \'Syuyo\' × pierardiiセッコクの紅色品種と原種ピエラルディーの交配種です。ややうつむき気味に花を咲かせるのですが、下から見上げるとすごくキレイです。バルブは直立せず、斜上する傾向があるようです。花の咲いた状態で手に入れたのですが、来年は自分でしっかり咲かせたいと思います。

セロジネとシンジュクの関係

Coelogyne Memoria↑新宿御苑と縁が深いとされる、メモリア・サダコ(手前)とメモリア・オカミ(奥)。サダコにはシンジュクNo.6、オカミにはシンジュクNo.8(もしくはNo.7)のナンバリングがあります。
セロジネには「シンジュクNo.○○」とナンバリングされている交配種がいくつかあります。品種名のあととかに括弧付きで記載されたりしているので、正式な名称ではないのでしょう(これとは別に、正式な名前がCoel. Shinjukuという品種もあります)。なぜこんな名前がついているのか、疑問に思っていたのでこれについて少し考察してみたいと思います。少ない資料での考察で、憶測もふんだんに入っているので戯言と思って頂ければ幸いです。

日本におけるセロジネの交配と経緯

経緯として日本では新宿御苑で昭和のはじめころ、セロジネの交配種がいくつも作出されているので、それに当てられた名前だと思われます。新宿御苑はセロジネに限らず、日本での洋ラン育種・栽培の黎明期を大きく支えた存在です。御苑に奉職されていた岡見義男さんは10数のセロジネ交配種を作出されており、氏により作出された品種群かもしれません。岡見さんの著書に書かれていたセロジネに関する内容で少しおもしろい箇所があったので、抜粋します。
[note]筆者も10余種作出したが、実生は発芽しやすいものであるから、鮮明な改良種でも作出されたらおもしろいと思う。
「ラン 種類と培養」 より抜粋[/note]ここからも、セロジネに関心を持っておられたことがうかがい知れます。

時を経ての登録

当時ちゃんと登録手続きをしなかった(できなかった)のか、正式に登録されたのは21世紀に入ってからという新宿御苑系の交配種がいくつか見られます。メモリア・フクバ、メモリア・オカミ、メモリア・サダコ、メモリア・トキコなどがそれにあたります。作出されたのは昭和の初めのようで著書には

[note]・Coelogyne Memoria Sasako 1928年開花 NO.6
・Coelogyne Memoria Tokiko 1925年開花 NO.4
※いずれも写真に添えられた説明[/note]などの記載が見られます。文末のナンバーは試作段階のもので、これが通称としてシンジュクの名前を添えて「シンジュク No.6」のように使われるようになったのかもしれません。
さて、これらの交配種を登録情報を調べてみると、オリジネーター(交配者…交配を行った人や組織)はShinjikuとなっており、新宿御苑を指すのではないかと思われます。登録者はSuwada Orch.となっているので、須和田農園の、故・江尻光一さんでしょうか。江尻さんは現在見られる一般的な家庭園芸の礎を築いた一人で、NHK趣味の園芸ではおなじみでした。とりわけ、ランの育種や普及では有名で、セロジネを現在に広く紹介した方でもあります。セロジネに関してわかりやすく書かれた一般園芸書も手がけておられます。

[rakuten]001:9784140401972[/rakuten]
登録されていなかった交配種を、新宿御苑の名前をしっかり記して正式に登録されたのではないでしょうか。あくまで憶測ですが。

さいごに

ファレノプシスやカトレア類、パフィオペディラムなどに比べると変異の少ないセロジネは、品種改良の対象にならなかったと思います。それを証拠に、現在登録されている交配種もかなり少ないです。そんなランの交配を手がけた岡見さん、一般に紹介した江尻さん、両氏はさまざまなランの育種を手がけ、普及に努められましたが、セロジネにも強い関心を持っていたのかな、と感じます。

[note]参考にさせていただいたサイト様、文献
・RHSのOrchid Register
(http://apps.rhs.org.uk/horticulturaldatabase/orchidregister/orchidregister.asp)
・岡見義男著 ラン 種類と培養 昭和39年発行 誠文堂新光社[/note]

デンドロビウムの分類

Den. parishii
Den. parishii

デンドロビウム属はたくさんの種類があり、性質や形態のが激しく異なるものがたくさんあります。そこで、正確な分類が必要になってきます。ちゃんと理解できているかは自分自身で不明ですが、こんな感じかなと自分なりに解釈した「デンドロビウムの分類」に関する内容を記事にします。内容に関しましては、文末に記載しております「DENDROBIUM and its relatives」を参考にしました。洋書で自分の読解が謝っているかもしれないので、その点はお許しください。

古い分類から今の分類まで

デンドロビウムの分類を時代系列で追っていきましょう。まず、ルドルフ・シュレヒターによる4亜属41節の分類を見ていきます(1912)。
001
この分類は今でも広く認知されているのではないかと思います。デンドロビウム属を分類の根幹としています。
さらにF.G ブリーガーはその分類を大幅に見直し、属の上位分類であるデンドロビウム亜連(DENDROBIINAE)を6系列44属に分類しましたが(1981)、植物学者には受け入れられておらず、採用はされていないようです。

現在の分類

現在では、シュレヒター、ブリーガーの分類を合わせ、更に発展させたようなものもあります。「DENDROBIUM and its relatives(2000)」に掲載されている分類がそれです。この本ではデンドロビウム属を36節、さらに今までデンドロビウム属に分類されていた一部を格上げして12属にまとめています。更にその13属36節をデンドロビウム亜連でくくっています。階層ではなく、両方を混ぜてアルファベット順で一覧にしており、これはこれでわかりやすいので、一部抜粋して紹介します。ただ、この分類が広く認められているのかどうかはわかりません。あくまで解釈の1つとお考えください。
dendro
これを階層で簡単にまとめると以下のようになります。
dendro2

デンドロビウムの上位分類

今までの流れから考えると、上位分類の「亜連」更に上位の「連」から系統立てていかないと、すっきり分類できないのかもしれません。ちなみに、亜連より上位の分類は、以下のようになっています。
dra
単にデンドロビウムというと、デンドロビウム属の植物を指すのが一般的ですが、個人的には上位分類のデンドロビウム亜連に入れられている他の属も含めて、デンドロビウムと呼んだ方がいいのではないかと思います。
分類などに関しては↓以下の書籍が非常に詳しいので、機会があれば読んでいただきたいと思います。原種なども写真付きで網羅されているので、デンドロビウム好きには堪らないと思います。ただ、洋書(英語)です。

Dendrobium and Its Relatives

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セロジネの交配種いろいろ

セロジネとはなんぞや?と言う方は、「セロジネとその魅力」をご覧ください。
セロジネ交配種の花は似たようなものが多いですが、じっくり見るとちょっとずつ異なる違いが楽しかったりします。特にリップの色合いや模様の違いが堪らなくもあります。そんな交配種を紹介します。

インターメディア Coel. Intermedia

Coelogyne Intermedia代表的なセロジネの交配種です。生育も旺盛で、バルブの数も年々増えていって大株の開花は見事です。リップにレモンイエローの模様が入ります。芳香はややきつめです。花が一回り大きな大輪の品種マグニフィカム(Coel. Intermedia ‘Magnificum’)も比較的よく知られています。Coel. cristataとCoel. tomentosa(= massangeana)を掛け合わせた原種同士の交配です。花姿や性質が非常に優れているので、交配種の親としてもよく用いられているようです。

コスモ-クリスタ Coel Cosmo-Crista

Coelogyne Cosmo-Cristaインターメディアを少し大きくしたような花です。リップに入る模様はやや濃いめの黄色で、とりあえずそこで違いがわかります。花も若干こちらの方が大きめに見えます。こちらも芳香はややきつめです。基本的な性質はインターメディアと変わりません。Coel. Intermedia × Coel. cristataの交配種です。シンジュクと名前が振っていることがあるのですが、新宿御苑で作出された品種かはよくわかりません。

メモリア・オカミ Coel. Memoria Okami

Coelogyne Memoria Okami新宿御苑の品種で、シンジュクNO.7(資料によってはNO.8)のナンバリングがされています。花茎は下垂せずにやや斜上する性質があります。花はコスモ-クリスタに似ますが、上萼片が立ち上がるので見た目の雰囲気はやや異なります。名前に含まれるオカミはおそらく、セロジネの交配種をたくさん作出された岡見義男さんの事だと思われます。Coel. Intermedia × Coel. Shinjyukuの交配です。

メモリア・サダコ Coel. Memoria Sadako

Coelogyne Memoria Sadako新宿御苑の品種で、シンジュクNo.6のナンバリングがされています。ほかの交配種に比べると花数はやや少ないですが、存在感の強い大輪です。リップ全体が赤褐色に色づき迫力があります。どことなく片親である原種スペシオサの雰囲気を持っていると思います。色彩とか全然違いますが。Coel. speciosa × Coel. Intermediaの交配です。

セロジネとその魅力

最初に

原種トメントサ
原種マッサンゲアナ(トメントサ)

このページは「セロジネ」と言う洋ランの魅力とつきあい方を2ページにかけて紹介しています。
以下の順番で説明します。ランの花と言えば、カトレアやコチョウランのようにあでやかで派手に咲かせると言ったイメージもありますが、セロジネは楚々として粛々と咲くと言った感じです。嫌みがなく、シンプルなだけに飽きのこないところが魅力です。クリスタータやムーレアナは原種かと思えるほど洗練されており、マッサンゲアナ(トメントサ)の長く下垂する花茎は雄大さを感じさせます。ただ、原種は入手しづらい、花付きにムラがあったり、やや暑さに弱いものがあるなど、とっつきやすいとは言いづらいです(もちろん、フラクシダのようにとっつきやすい原種もあります)。そこで、おすすめしたいのが交配種のセロジネです。
セロジネの原種は100種程度が知られていますが、交配種の数はさほど多くないです。これは、原種そのまんまの花が美しくて見栄えがするので、改良の必然性があまりなかったからではないかと思います。ただ、交配種は原種の雰囲気を残しつつ、丈夫でとっつきやすいものが多いので、おすすめです。花に香りのある種が多いですが、満開時期はちょっと花につくほどきつい芳香になるものもあります。

つきあいやすい品種

コスモクリスタ(左)とインターメディア(右)
コスモクリスタ(左)とインターメディア(右)

往往にしてとっつきやすいものが多いとも言われますが、中には生育サイクルの把握しにくいものや、花芽を中々出してくれないものもあります。
最もつきあいやすいのは「インターメディア」と「コスモ・クリスタ(旧名シンジュクNo.8)」です。インターメディアは寒さに強くて花付きもよいセロジネの代表品種で、冬から春に花付きの鉢植えである程度で回ります。また、花の大きな個体「インターメディア’マグニフィカム’」も、ラン展でときおり見かけます。同じ系統の「コスモ・クリスタ」も非常に花付きがよくて生育も旺盛ですが、インターメディアほども出回らないのではないかと思います。いずれも交配種なのですが、インターメディアを更に改良(交配)した品種がコスモ・クリスタなので、性質も見た目もそっくりです。下の図は、2品種の系譜になります。コスモ・クリスタに関しましてはこちらのページに詳しくまとめておりますので、参考にしてください。

コスモ・クリスタとインターメディアと交配系譜
コスモ・クリスタとインターメディアの交配系譜

この2品種に関して言えば、5℃程度あれば冬越しできます。新芽の出る時期も5月~6月頃と一定しているので、栽培しやすいです。新芽の出る時期が不定期なものや1年に2回出るものは、生育サイクルが把握しづらいです。まとめますとこの2品種は

・暑さと寒さに強い
・花付きが非常によい
・生育サイクルが把握しやすい

などの特長が挙げられます。以降の内容は、インターメディアとコスモクリスタの性質を前提として説明させていただきます。
[note]

※補足「新芽の出てくる時期が一定」について

「新芽が出てくる→活発な生育期に入った」ということになります。それを合図として肥料をはじめたり、必要なものは植え替えをしたりします。ですから、新芽の出てくる時期が一定だと、いつ頃までにバルブが肥大して、花芽を付けるかという生育サイクルが把握しやすいのです。[/note]

具体的な生育サイクル

フラクシダ'ラッキーボーイ'とっつきやすい原種のひとつ
フラクシダ’ラッキーボーイ’とっつきやすい原種のひとつ

たいがい2月~4月に花が咲き、花が枯れて少し経ってから新芽を出します。新芽の出る時期はだいたい5月から6月頃です。新芽は夏にかけてぐんぐんと生長します。暑さが過ぎて気温が徐々に下がってくる9月中頃から一気にバルブが肥りはじめ、11月頃までに肥大が終わります。その後肥大したバルブの付け根あたりから花芽を伸ばして、2月~4月頃に花を咲かせます。毎年これの繰り返しです。
年々株が大きくなってくると、出てくる新芽の数が増えて、結果として花芽の数も増えます。上手に育てると、年を追うごとに花数が増えるので、育て甲斐があります。
生育サイクルの異なるタイプ(新芽から花芽を出すものなど)も多くありますが、ここでの説明は省きます。

栽培メモ

011■水が好き
株が大きく生長すると、バルブもしっかりと大きく育ち、たいがい花を咲かせてくれます。とにかく水が好きなランで、油断して乾かしてしまうと葉先が枯れたり、変によじれた葉っぱが出てきたりします。新芽が出てきてから秋にバルブの肥大が完了するまでは十分水を与えます。乾きにくいという点では、プラ鉢に水ゴケが管理しやすいですが過湿になって根腐れを起こすことがあるので注意です。プラ鉢を用いる場合は、株の大きさに対して少し小さめの鉢を使った方が失敗は少ないです。冬も乾いてきたらちゃんと水をやります。デンドロビウムみたいに乾かしてはいけません。

■風通しのよい日陰が好き
次に大切なのは置き場所です。基本的に薄暗い場所でよく育ちます。直射日光は葉っぱが黄ばんだり、最悪の場合焼けて枯れてしまうのでよくないです。風通しのよい日陰が適しており、吊して育てることができればなおよいです。当方では、屋外の雨ざらしの場所でよく育っています。秋に10℃を切るくらいの頃に屋内に取り込みます。一定の低温に当てないと花芽が伸びにくいと言いますが、インターメディアに関してはあまり関係ないように感じます。

■肥料は少し必要
肥料は少しあったほうがいいです。新芽が伸びてきたら液肥をときどき与えます。暑さでバテると根が肥料を受け付けないので、真夏は一旦やめた方がいいです。秋に涼しくなってきたら、バルブが完全に肥大するまで、リンカリの液肥をときどき与えます。
風通しのよい日陰で水を十分与えて、秋までに大きなバルブに育てることがポイントです。
[note]

※補足 セロジネを扱った書籍

洋ランの育て方を扱った実用書にはセロジネを取り上げているものも存外にありますが、紙面の都合上あまり詳しくは書かれていません。そんな中でも、一冊丸ごとセロジネを扱っている書籍が1冊だけあります。「NHK趣味の園芸・よくわかる栽培12か月シリーズ セロジネ」 がそれで、基本は月ごとの管理が記載されており、それ以外の基本情報も記載されています。[/note]

入手方法

冬から春にかけて各地で行われるラン展では、たいがい花付きのセロジネが出回ります。また、この時期なら初夏から新芽が伸び始めて秋にはバルブも完成し、翌年の開花も期待できます。

秋口のラン

夏の終わりから、秋口にかけて庭で咲いているランの花です。明確に秋咲きというより、不定期咲きでちょうど今の時期に咲いてくれたといった感じです。

カトレア ミニパープル[C. Mini Purple]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA品種の詳しい説明はこちらの過去ログを参照にしてください。
新芽がある程度伸びたらバルブが完成する前に花を咲かせるタイプのミニカトレアです。1年に2回くらい咲きます。ある程度株が大きくなってきたからか、新芽が同時に数本伸びてきて、花も6輪くらい咲きました。支柱も誘引もせずにほおっておいたので花の向きがむちゃくちゃで、1枚に収まりません。一度びしっと誘引してキレイに仕立ててみたいもんです。今回、梅雨頃から雨のかからないベランダで水遣りを少しシビアにしたのですが、それとこの時期にたくさん咲いたのは何か理由があるのか偶然なのか。

カトレア リトザック ’リビング・ドール'[C. Litozac ‘Living Dool’]

OLYMPUS DIGITAL CAMERA以前はソフロレリオカトレア属でしたが、カトレア類の分類の大幅見直しで現在はカトレア属に。不定期咲きのミニカトレア交配種で、前回は春に咲いたと思います。草丈はミニなのですが花がミディくらいで幅10cmくらいになります。庭に放置していたら葉焼けしつつ、きれいな花を咲かせてくれました。ごめんなさい。もともと花つきがよい品種のようで、つぼみができると途中でしけったりせずにいつも咲いてくれます。リトザックは’リビング・ファイアー’という真っ赤な花色の個体もよく知られています。

ドリテノプシス・パープル・ジェム'[Dtps. Purple Gem]

OLYMPUS DIGITAL CAMERAパープルジェムについてはこちらの過去ログを参照にしてください。
ちっちゃな花が舞い踊るようにたくさん咲くタイプのコチョウラン類です。開花期間と花もちがすごく長く、秋から冬まで咲き続きます。この個体はやたら花茎が長く伸びてバランスが悪いですが、花びらがややシャープな感じが素敵なのです。庭の木陰に吊るしておけば、特に手間もかからず咲いてくれる丈夫なラン。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAこちらもちょうど今咲いている、白花のパープルジェムです。冬にも咲いていて、今年2度目の開花です。

夏のファレノプシス・ベリーナ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ファレノプシス、要するにコチョウランの仲間というと、ゴージャスな花を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実にいろいろな系統があります。その中でも夏から秋咲きのファレノプシス・ベリーナ〔Phal. bellina〕はとっつきやすくて花つきのよい、お勧めのファレノプシス原種です。

とっつきやすいと思うポイント

・ある程度強い日射しでも葉焼けしにくい
・気温が高くて元気な時期につぼみを付けるので、低温や生育不良でつぼみが枯れることが少ない
・比較的低温にも耐える(経験では5℃~7℃程度)
・花の香りがよい(個体差や季節でちがいがあるかも)

こんなところが通常のコチョウランと違う

生育サイクルなどが通常のコチョウランと少し異なるので、その「違い」を見ていきましょう。
その1 花の咲く時期が違う
通常
冬の休眠期に花茎を伸ばして春に咲くものが多いです。
ベリーナ
春に気温が高くなってくると花茎を出して、夏のはじめから秋の終わりくらいまで開花します。

その2 花の咲き方が違う

つぼみを付けながら花茎をさらに伸ばしていきます。
つぼみを付けながら花茎をさらに伸ばしていきます。つぼみの右側に見えるのが花茎の芽先です。

通常
ややタイムラグがあるものの、同時期にたくさんの花が咲きます。花茎の先端のつぼみが咲ききれば、切り戻したりしない限り、それでその花茎の開花は終わりです。
ベリーナ
まず、花茎が少し伸びて1つのつぼみがつきます。そのつぼみがある程度大きくなると、更に花茎を少し伸ばして新たなつぼみをつけます。それの繰り返しで、つぼみをつけながらどんどん花茎を伸ばしていきます。一度に見られる花数は1輪~2輪程度です。枯れたら次のつぼみが咲く、と言った感覚に近いです。一株から複数の花茎を出すこともよくあります。1本の花茎で数年間花を咲かせ続けることもあります。また、秋に少しだけ出た花芽が咲かずに冬になって生長が止まり、春になって伸び始めることもあります。

その3 葉や根っこが違う
通常のコチョウランに比べて、葉の厚みが薄くて、光沢があります。根の太さはやや細めです。その反面、花びらにやや厚みがあります。水を貯蔵したり乾燥に耐える必要のあまりない、案外湿潤な環境に自生しているのかもしれません。

共通するところ

全体。葉の出方などは通常のコチョウランと変わらないです。
全体。葉の出方などは通常のコチョウランと変わらないです。

1枚の葉っぱが生長したら、次の葉を出すと言う成長の仕方は共通しています。全体的な株姿も同じようなものです。栽培も通常のコチョウランに準じるところはありますが、ベリーナのほうが性質は強めで育てやすいと思います。

栽培雑感

置き場所
うっかり葉焼けをさせたことがないので、日射しには比較的強いようです。冬以外は基本屋外の半日陰ですが、通常のファレノプシスよりも明るい場所 -真夏でも午前中少し日の入るところ- でよく育っています。その方が花付きがよいような気がします。風通しのよい場所に吊しておくと機嫌がいいです。冬は室内に置いてますが、5℃~7℃程度の室内でも特に枯れていません(生長は止まります)。
日常の管理など
用土はバークチップを使い、素焼き鉢に植えています。水やりは夏は毎日、春と秋は乾いていたらたっぷり、冬は2週間に1回くらいです。肥料は梅雨頃から2週間に1回くらい薄めの液肥を与えてます(秋まで)。あまりたくさん要りませんが、少し与えると元気のような気がします。
花芽や葉の一部がなにものかに食害されたことがあるので、春先にスプレー式の薬剤を1度だけ散布しています。ナメクジではないと思う。
注意点
花茎が緑で生きているうちは切らないようにします。寒くなると生長が止まりますが、季節が変わって暖かくなると伸びて花を付けることが多いからです。

その他

見た目がすごくそっくりな仲間に、ファレノプシス・ビオラケアがあります。ベリーナとビオラケアは今ひとつ違いがわかりません。これらの原種って個体差とか地域差が多そうなので、さらに混乱します。
香りがよいと書きましたが、同じ花でもほとんど香らないときもあれば、すごく香りが漂うときもあり、夜とか朝とか時間帯で差があるのかもしれません。

季節はずれのデンドロ

ノビル系交配種は早春から春にかけて花が咲くのが一般的ですが、まれに季節はずれの梅雨時に少しだけ花を咲かせることがあります。

季節はずれに咲いたデンドロ

ヒメザクラ 'フジッコ'
ヒメザクラ ’フジッコ’

6月~7月ころの季節はずれ開花は大体花芽ひとつくらいで、開花すると2~3輪程度と株全体で見るとおまけみたいな開花ですが、特に変わらずきれいです。また、花芽がついてから開花するまでが1ヶ月~1ヵ月半と非常に早いのが特徴です。気温が高くて潤っていてデンドロにとってはよい季節なのでしょう。通常は10月~11月に花芽が出てきて、少しずつ大きくなって開花するのは2月~4月頃です。

なぜ季節外れに咲くんだろう

イエローソング 'キャンディー'
イエローソング ’キャンディー’

なぜ季節外れに少しだけ咲くんでしょうか。ちょっと考えてみました。
1本のバルブでも、上と下では成熟スピードが違います(見た目は変わらないです)。真ん中のあたりが一番早く成熟して、花芽もこのあたりが一番つきやすいです。それに比べて上や下は成熟スピードが遅れるので、上とか下が成熟しないまま冬を迎えてしまって、真ん中だけ花芽ができて春に開花、暖かくなって再び生長を始めて花芽のつかなかった箇所が成熟し、花芽を作るのではないかと思います。また、バルブが成熟してから一定の低温に当たらないといけない、といいますが、現在の交配種はいろいろな種が複雑に交配されていて、品種によっては低温が必須条件となっていないのかもしれません。生育期と休眠期もややあいまいですし(開花と新芽伸長が同時にすすんだりとか)。季節はずれ開花は、自分のところではバルブの先端のことが多いです。
寒さが来るまでにしっかりと作り込めたら、こんなことにならないのかなあ、とも思います。むずかしいです…。

梅雨に咲いてますランの花

梅雨のじめじめ時期でも、何かしらランは咲いてます。そんな夏に向けての地味めなランを2つほど紹介します。

オサラン Eria reptans

OLYMPUS DIGITAL CAMERA日本にも自生する小型の野生ランで、洋ラン的に属名でいうとエリアの仲間です。梅雨時期になるとバルブの先端から花茎を伸ばしてちっちゃな白い花が1~2輪くらいつきます。花の寿命はランの中では短い方で、開いて2~3日くらいでシミみたいなのがちょこっと浮き出てきてしおれていきます。一番キレイなのは開花直後くらいです。バルブが行儀よく直列に連なって増えていきます。冬は落葉します。

手のひらサイズ
手のひらサイズ

寒さに強くて、凍結に気をつければ屋外で越冬できます。とりあえず、半日陰でたっぷり水やりすれば機嫌良く育ちます。ヘゴづけにしても楽しそうです。

ポリスタキア プベスケンス Polystachya pubescens

OLYMPUS DIGITAL CAMERAアフリカの小型着生ランです。開花時草丈15cmくらい。開花期は梅雨時期から夏くらいです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERAバルブの生長がよければ、1本の花茎から十数輪の花を下から順番に咲かせます。花色は黄色で赤褐色の横筋が入るのが特長です。花の大きさは1.5cmくらいです。バルブがなければ何となくキンランとか日本の野生ランを彷彿とさせるような花です。花の寿命は10日くらいですが、一気に咲かずに順番に咲くので1ヶ月以上は楽しめると思います。

めくるめく原種デンドロの世界 その4

ランは花の美しさやおもしろさもさることながら、その草姿も十分楽しいのではないかと思います。というわけで、個人的に好きな草姿のデンドロビウムを紹介したいと思います。今回は「デンドロ界のぺたんこ」こと、デンドロビウム・プラティガストリウムです。

Den. platygastrium デンドロビウム・プラティガストリウム

一見普通のバルブのように見えるが…
一見普通のバルブのように見えるが…

さっそくですが、その草姿を見ていきましょう。プラティガストリウムの草姿は見た目、よくあるノビル系デンドロビウムに似ています。しかしこれを90度、角度を変えてみると…

厚みがない
厚みがない

画像では少しわかりにくいのですが、厚みがなくて薄っぺたいのです。普通に棒状に生育すればよいものの、なぜプレスされてのされたような姿なったのでしょうか?すごい狭いスキマとかでも対応できるから?おそらく違います。自生地では木の幹を背もたれにして、逆さまに張り付いたりしてるのかも。
どちらにしてもこのぺっちゃんこ具合が最大の魅力と感じます。バルブのツヤツヤした感じもたまりません。

葉面が横を向く
葉面が横を向く

葉っぱの出方も微妙におもしろいです。お日様の光を効率的に受けられるようにか、葉面が斜め横から横に向きます。大株だと、このバルブは50cm近くの長さになるそうです。

追記

花は主に春に咲きます。クリーム色のちっさな花が一本の花茎に数輪まとまって咲きます。見た目はセッコクに近いです。育ててる感覚で、ノビル系とかとあんまり性質変わらないんじゃないかなあ、と思います。水やりとか日射しとか。耐寒性もさほど弱くなさそうですし。
見た目すごくそっくりなものに、デンドロビウム・ラメラツム(Den. lamellatum  Synonym:Den. platycaulon)があります。こちらもバルブぺちゃんこです。